2013年05月02日
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三百字小説『シシカバブーの魔球』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 魔球投手は卒業後にシシカバブーになった。

 魔球投手と煽てられて慢心した自分の愚かさに絶望して、誰かに食べられる方がマシと思ったからだ。

 ある日、昔の仲間がシシカバブーを訪れた。

 「どうしても負けられない草野球の試合がある。魔球を投げてくれ」

 しかし、シシカバブーは首を縦に振らなかった。「伝説は伝説のままにしておく方が良い」

 昔の仲間は、あの魔球はトリックではないかと疑った。そこで、強引に魔球を投げざるを得ない状況を作り出した。

 魔球は確かに実在した。

 飲み屋の戦勝祝賀会でみんなは飲んで食べた。

 「おい、ケバブが来てないぞ」

 「こっちにあるぞ」

 昔の仲間が気付いたとき、シシカバブーは既にみんなの腹の中だった。

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

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